またまた『光』の速度
ニュートン力学の基礎にあるのは
『ガリレオの相対性原理』と『ガリレオ変換』
ガリレオさんの相対性原理と
アインシュタインさんの特殊相対性原理は
似ているようだけど出発点が少し違うんだ
簡単に書いてみるとガリレオさんの相対性原理は
異なる慣性系でもその慣性内の物理法則は
同じだよという原則
アインシュタインさんの特殊相対性原理も
異なる慣性系でもその慣性内の物理法則は
同じだってところは一緒なんだけど
異なる慣性系でも光の速さは一定という光速度不変の原理が
ガリレオさんの相対性原理に組み込まれているって感じかな
異なる慣性系の間でも光速が一定だとするならば
空間だけじゃなくて時間も加味しなくちゃ
いけないんじゃないか ってところが違うみたいなんだ
時間や空間の相対性を加えて
異なる慣性系でもその慣性内の物理法則は同じである
そこが違うところなんだけどわかりにくいね
どちらにしても
異なる慣性系内の物理法則が同じだっていう相対性原理に
疑問を挟もうとするのなら
この宇宙すべての物理法則ってものを
もう一度見直す必要が出てくる
これはすべての物理現象を覆しちゃうよね
ニュートン力学どころかすべての物理法則にとって
相対性原理ってものは不可欠なんだから
ひとまず考えるのはやめておこう
ガリレオさんの相対性原理と
アインシュタインさんの特殊相対性原理
どちらも 違う慣性系でも
慣性系内での物理法則は同じであるという
当たり前と言えば当たり前のことを
言っているだけってことにしておいていいんじゃないかな
だから問題になるのは『変換』の仕方だね
エーテルの検出を目的とした光の速度の測定実験の結果
光の速度は 運動してようとしていまいと
不変であるという結論が出てしまった
列車に乗っている人が投げたボールの速度と
駅でキャッチボールしている人の投げたボールの速度が
同じってことになると困っちゃうじゃない
列車の速度が
100km/hくらいならまだいいけど
200km/hなんてことになったら
ボールは投げている人の
後ろに飛んでいくみたいな話になっちゃう
これは極端な話だけどこれから書こうとする電磁気学は
電磁波を扱うんだ
光が電磁波一種とするならば速度の違う慣性系の間で
ガリレオ変換を適用するとおかしなことになる
マクスウェルさんの電磁方程式は
ガリレオの相対性原理を
満たさなくなっちゃうんだよね
『エーテル』があるのか無いのか
そんな問題よりもっと深刻な問題が起きちゃったわけだ
対応原理
仮説(今のところ正しいとされる)に反する検証結果が出たときに
科学者たちの対応って前に書いたけど
まずは実験結果を疑うところから始まる
その上で 検証結果が間違っていないとなれば
なんとか辻褄の合う考え方をそこに導入するってところかな
実験結果と食い違う仮説に
修正を加えるってことかもしれないね
ただ その修正には
新しく立てられる理論(修正)に必ず古い理論を
内包している必要があるわけなんだ
でないと 元の仮説を全否定しちゃうことになっちゃう
それまで正しいとされていた理論は間違ってはいないけど
その成立には少し条件があるよ ってことかな
メタ理論と言ってもいいかもしれない
古い理論を新しい理論の特殊解とするぐらいの
理論建てが必要なわけだね
新しい理論は必ず古い理論を内包する
これを『対応原理』と呼ぶらしいんだ
対応原理がどうしても構築できない場合には
もともとの原理(正しいとされている仮説)の
見直しが必要になっちゃうけど
それまで積み上げられてきた理論を見直すなんてことは
最終手段でしかないんだよね
できればしたくないっていうのが
本音なんじゃないかな
ましてや ニュートン力学は
力学として完成形とされているんだよ
なんとしても対応原理を見つけ出す必要があったってことだね
今回 問題となるのは電磁気学をニュートン力学の
基礎とされるガリレオ変換で考えちゃうと
ガリレオ相対性原理が成り立たなくなるという問題なんだ
ニュートンvsマクスウェル
ニュートンvsマクスウェルなんて書いちゃうと
怪獣大決戦みたいになっちゃうけど
けっして二人が戦っていたなんてわけじゃないから安心してね
電磁気学と力学が別々に
研究されていたってことが発端なんだから
ニュートン力学は完成された原理
マクスウェル電磁気学も完成された原理
だけど この二つの原理を同じ土俵にあげちゃうと
矛盾が生じちゃう
これはエーテルの存在を実証するために行われた
光速の実験が直接の引き金
もっとも 光速の測定実験以前にも
この二つの原理では
基本の部分で違うところがあったんだけどね
マクスウェル方程式は
前提として近接力を置いているのに対して
ニュートン力学は部分的に遠隔力を認めている
ニュートンさん自身 遠隔作用については
不満を持っていたらしいけど どうしても物理学的に
(実験観測の結果を数学的に表現する)
理論建てができなかったみたいなんだ
もともと 力の伝達は近接作用が中心
遠隔作用なんてものは魔法みたいな扱い方をされていたらしい
それでも 数学的には遠隔作用を導入することで
理論構築がスムーズにいっちゃったんで
ニュートンさん以後の物理学者たちは
この遠隔作用って考えかたを受け入れていったみたいだね
電磁気学の研究でもクーロンさんは
ニュートンさん以後の遠隔作用全盛の人だったから
発表された『クーロンの法則』は
電気の力が遠隔作用だってことになっているんだ
そこに 『場』という新しい概念を導入したのがファラデーさん
ファラデーさんは当時で言うところの
自然哲学者に分類されるんだけど
理論には特化していたけどそれを物理学の求めている方向性
数学で表すってことは苦手だったみたい
もともと貧しい家庭で生まれ育ったためか
数学とかは勉強していなかったみたいだから
(なんといっても小学校中退らしいから)
ただ その発想や理論建てすごい人なんだよ
そして マクスウェルさんがまとめ上げた
電磁気学の基本となるマクスウェル方程式は
『場』の概念が無ければ数学として表現できないそうなんだ
電磁気学でまとめられているクーロンの法則も
遠隔作用を『場』を導入した近接作用として
書き直されている
近接・遠隔作用(『場』)はひとまず保留にしておこう
とにかくニュートン力学とマクスウェル電磁気学
二つの原理を混ぜ合わせると
矛盾が出てくることがわかっちゃった
そして二つの原理はどちらも完成形に近いんだよね
そうなると なんとかその二つの原理の間をつなぐ
理論建て(対応原理)が必要となってきちゃった
そこで出て来たのがアインシュタインさんの
『特殊相対性理論』
特殊相対性理論はニュートン力学の
『対応原理』 ってことになっているんだよ
さあ やっとアインシュタインさんに戻れるね