思考と感情

散歩の途中
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感情と記録

意が観測装置 

納得はできないが可能性の一つとして

受け入れてもいいだろう

では 

わたしが考えていることや感じていることは

どうなるんだ? 

それもただの記録紙に羅列された

数字やグラフ線と同じだというのか? 

ただの観測装置だとしたら

なぜ感情などというものがある?

……意がただものを測るだけに存在する 

そのことを仮に認めたとしましょう

でも ただの計測器になぜ感情があるんですか? 

無意味じゃないですか

ただ黙って計測していればいいものに

なぜ喜びや悲しみなんて余分なものを

感じるようにしたっていうんです?  

わたしたちが考えたり感じたりするものが

無意味だってことは認めてもいい

だが その無意味なものに

あたかも意味があるかのようにする必要が

どこにあるんです?……

――考え方を変えてみろよ

おまえの知っている計測器

車のスピードメーターでもいいし

温度計・時計なんでもいいが

それに感情ってものがあったら

どうなると思う? 

ひょっとしたら

一時十四分なら最高の喜びだが

五時三十二分は最悪だって時計が感じてたら

そのことに対して責任が持てるかい? 

じゃあ五時台は無しにしましょう

ってわけにはいかないだろうが――

――それに喜びや悲しみや

そんなこんなの感情ってやつの持つ情報量は

数字や点で示されるより

多いってことも忘れてもらっちゃ困る

読み取る側に理解できるのなら

そのほうがずっと効率的だろう

数字やグラフで表示するというのは

普遍的に理解させるためなんだからな

観測器がどう思っているか

考える必要はないんだ

というより その思いってやつがそのまま観測結果

おまえが知っている

数字やグラフのデータだってことさ――

……では 思いそのものには意味はないと……

――違うな

思いそのものに意味があるんだ

それこそが観測データだから

ただし そのデータを読み取るのは

おまえら以外のなにものかさ

おまえらがそのデータを読んだところで

意味なんか掴める訳がないってことだけだ

書き込まれた数字をみて

一喜一憂することに意味がないってこと

もっとも その一喜一憂も

観測データのひとつかもしれないけどな――

生きる意味

ここまででだいたい

『セカンド』ってものに対する

『散歩』の言いたいことは

書けたような気がするね

『セカンド』も含めて

生命ってものはこの世界の

(『時』『色』『意』)

バランスをとるための

『意』の調整装置ってこと

『セカンド』は調整装置の最終兵器

ってことなんだ

だから どうしても無理やり感が

出てしまうってことだね

『意』は砂時計の中の砂みたいなもので

自分が消滅していくことで

『時』と『色』の存在を手助けしてるっていう

ぼくたちには納得いかないけど

ただの観測装置ってことだね

『セカンド』の無理やり感っていうのは

ひとつが肉体の耐用年数と

詰まっている『意』の量の間の

あまりにも大きいギャップ

そして その『意』の観測記録としての記号が

『セカンド』には意味が掴めないってことかな

その記号を

なんとか自分たち流に翻訳して

なんとか意味を持たせちゃうところに

『セカンド』の不幸があるってことだね

言い換えれば

ぼくたち人間が人生に悩んだり 

生きる意味を探し求めるっていうのは

何の意味もないってことに

なっちゃうんだよな

ファースト

セカンドっていうのか

人間に生きている意味が無いっていうことなんか

『散歩』を読まなくっても

ぼくたちが薄々感づいていることだと思わない? 

現世での金や地位や名誉を求めるのはわかるけどさ 

死後に名を残したいとか

自分の生きた足跡を残したいって

思っている人もいるかもしれないけど

これも不老不死の願望と同じように

死後数千年のことなんだと思うんだ

人類が滅んだ後に残っている

自分の足跡なんか

意味ないんじゃないかな

ブロントサウルスの

ある個体Aが考えていたことを

ぼくたちが大事に思ったりしないもの

では なぜぼくが

『散歩』に嵌ってしまったのか

じつはこのセカンドについて書かれている部分は

導入部でしかないんだ

この後に出てくるのが

この世界の目的だったりするんだよね

もっとも ここで語っているエオにも

確定したことはわからないとしている

だから仮定の話なんだ

それも なにひとつエビデンスが無いんだから

(あまり好きな言葉じゃないんだけどな

支える証拠とかでいいと思うけど 

いつからこの言葉がはやりだしたんだろう)

仮定というより

物語みたいになっちゃっているんだよね

ただ その中にぼくが引っかかった 

そして『散歩』のなかの

『わたし』も『エオ』も特別扱いしているものがあるんだ

それが『ファースト』っていう存在なんだよね

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