セカンドとしての人類 Ⅰ

散歩の途中
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王国の誕生

――知力と物理力のバランス

そのことが内乱時代のテーマだった

だが その末期において狡猾 いわば知力に特化すること

そして進化を己自身の形態を変化させるのではなく

道具を変化させることで

それまでにない速度で成し遂げる能力を身に付けた彼ら

もはや 変えられたルールの中では

他の生物たちにとっては

とてもかなわない相手だったことだろうな――

こうして聞くとエオという男は

人類というか人間ってものを

ディスっているように思える

というより 人類というかすべての生物・生命というものに

畏怖の念はなさそうだ

――それでも絶対者となるには

『火』の使用から二百万年ほどかかっている

もっともそれが恐ろしい程早いと見るのか

遅いと見るのかはそれぞれだろう――

200万年……

わたしには気が遠くなるような時間だが 

今 はなされているのは億単位の話

たしかに 早いか遅いかと問われると答えに詰まる

――覇者とみなされるには

そこまでの時間は必要ではなかったのだ

だが かれらは狡猾さとそして貪欲さという

ふたつの特化した資質を持っている

かれらの目標は覇者ではなく絶対者に向けられていた。――

貪欲さと狡猾さという点では

エオに賛同するしかない

賛同するしかないが

正面から告げられると反論したくなるのはなぜだろう

――覇者がなおかつ次代の覇者で有り続けるため

そう 絶対者になるための必要条件

自分の跡を狙う弱者を根こそぎ刈り取ること

そのための期間として二百万年

おどろくべき短期間といえるだろう

たった二百万年の間にこの惑星上には

かれらの役にたつ生物と

かれらに害にならない生物

駆除するには手間が掛かりすぎる生物しかいなくなったのだから

それからおよそ三万年 かれらの王国は続いていく――

約3万年前というと

ネアンデルタール人が絶滅した頃だと記憶している

人類っていうものが

ホモサピエンスのみになったころかもしれない

もしくはこのあたりから続いていく

氷河期の始まり当たりかも

たしかに 人類にとっての

分岐点 そういうことなのかもしれない

ヒトと霊長類

ホモサピエンスという種は 

(ぼくたちの属している種だね)

10万年まえには誕生していたといわれる

(これも説によってバラバラ

30万年前にはいたという人もいるけど)

ホモサピエンスって簡単に言うけど

正確に言うと

『真核生物ドメイン動物界

脊椎動物門哺乳綱霊長目

ヒト科ホモ(ヒト)属サピエンス種』

って言うんだそうだ

まったく正確を期そうとすると

逆にわかりにくくなるのが科学の欠点だね

ヒトがサルから

進化したのかどうかも難しい問題

サル(特にチンパンジー)の進化の

延長線上に存在しているという説は

今のところ

否定されているみたいだけど

チンパンジーとかボノボの祖先から

(ボノボはチンパンジーにそっくりだけど

別種の類人猿だね)

600万年から700万年前に

分化したんじゃないかって

言われているみたい

チンパンジーのような

類人猿とヒトを

どうやって区別するのかっていうのは

これも難しい問題

『散歩』でも言われているけど

道具を使うというのは

必ずしも人間だけの特権じゃない

それこそ チンパンジーやオランウータンだって

使うものね

言語体系にしたって

その複雑さにおいて

現在じゃ違いがあるだろうけど

類人猿と人類が分化した当時でも

そうだったのかはわからない

有名どころの

ネアンデルタール人の骨格を

調べた研究では

喉の構造からも複雑な音声は出せなかった 

つまり複雑な言語体系はなかっただろう

って言われている

今のぼくたちが

過去の人類のことを知るには

やはり化石がもとになるよね

そうした体系的な特徴で考えると

直立二本足歩行っていうのが

最大の決め手だと思うよ

後 犬歯が発達していないという特徴もあるけど

もっとも 360万年前の

二本足歩行の足跡の化石が残っているし

一説では450~430万年前には

ラミダス猿人っていうのが

二本足歩行をしてたとも言われている

もっとも ヒトをホモ属という定義で括るなら

200万年以上前には

存在していたみたいなんだ

ただ この辺りは

はっきりした区分じゃないみたいだね

あきらかにホモ属とみなされるのは

どうやら180万年前の

『ホモ・エレクトス』

だって説が現在では有力みたいだけど

ヒトの拡散

ヒトっていうのが

ホモサピエンスを指すのかどうかは

しばし棚上げして

ホモ属が登場したのは

現在のアフリカ方面だというのは

(今のところ)

標準的見解だそうだ

もともと樹上生活者としての

特性を備えていたサルたちと同じように

ヒトの前身も

樹上生活に適していたはずなんだ

ところが アフリカでは

900万年前くらいから

乾燥化が始まったらしい

よく言われる『サバンナ化』だね

だから その環境変化に適応するために

直立二足歩行という形質変化が

起こったんじゃないかって言われている

アウストラロピテクスの時代には

(400万年~200万年前だね)

その二本足歩行を武器に

サバンナへと生息領域を広げていった

痕跡があるんだ

ここからは あくまでぼくの推測なんだけど

ヒト(ホモ属)っていうのは欲望の塊 

木から降りて歩き出したとたんに

どこまでもその生息領域を

広げようとしたんじゃないのかな

世界中にホモ属が広がっているのは

そのせいだと思うんだ

その当時の大陸の間は

意外に徒歩で移動することが可能だったみたい

アフリカからヨーロッパ・ユーラシア大陸は

地続きだし

もちろん アジア・ロシアも地続き

ロシアとアラスカ間が微妙なんだけど

当時は氷期

もしかするとベーリング海が

氷で繋がっていた時代があった

可能性もあるかもしれないね

もしそうならば

なんとかアメリカ大陸のアラスカ辺りには

たどり着けたんじゃないかな

アラスカにたどり着ければ

そこからはチリぐらいまでは

歩いていけるもんね

もっとも オーストラリア大陸だけは

どうやって広がったのか疑問だけど

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