近接力・遠隔力 続き
単純に考えてみよう
力ってものはどうやって伝わるのかって
前にも書いたけど
ぼくたちの周りで起きている
力の伝わり方って言うのは
直接物と物が接触することによって
伝わっているよね
だから はるか昔から力っていうものは
「物体が受けている作用や力というのは
物体の直近の『何か』の影響によるものである」
という仮説がたてられていたらしいんだ
この場合の仮説って言うのは
いつも書いているけど今のところ正しいとされる
結論みたいなもんだね
この昔からある仮説が『近接作用』
だけど 例えば太陽と地球の関係とか
天体の運行なんかを考えるときに
この近接作用の仮説では
なかなか説明が出来なかったんだ
そりゃそうだね
太陽と地球の間に
ロープがかかっているわけじゃないもの
デカルトさんなんかは『渦動説』で
宇宙は何らかの流体・媒質で満たされているんじゃないか
という仮定を設定したんだ
それが後に言われる『エーテル』ってもんだね
一時はこのエーテル論は
ひとまず有力な考えとして広まったみたいだけど
以降の実験で否定されちゃった
まあ 否定というより
保留ってことかもしれないけど
天体の運行や引力を研究していたニュートンさんも
近接作用で引力を説明しようとしたんだけど
うまくいかなかったらしい
だからこの近接力ってものに『?』が点いちゃった
ニュートンさんも
納得したわけじゃなかったみたいだけど
「宇宙のあらゆる質点(物のことだね)は
お互いに引き合う力を及ぼし合っていて
その力はどれほどの距離が離れていたとしても
瞬時に伝わる」
って仮定したってこと
この仮説が
『遠隔作用』って呼ばれるんだね
さてこの二つの仮説
どちらが正しいんだろう?
クーロン力
ニュートンさんが遠隔作用を提唱したのは
引力についてだったんだ
ただ ニュートン力学は
クーロンの法則が発表された時代には
絶対に近い信頼を置かれていたんだよ
引力は質量の積に比例して
距離の二乗に対して反比例するという
二つの要因によって導き出される
そしてクーロン力は
電荷の積と距離の二乗に対して反比例という
よく似た構造を持っているんだ
電荷の方は引力と違って
電荷の符号が正と負であれば引き合い
同じ符号の時は反発するっていう
違いはあるけどね
(引力は引っ張り合うしかないんだ)
だから クーロン力もまた
遠隔作用だって結論になっちゃったのは
当然のことなのかもしれない
ただ 学者さんたちって言うのは
正しいとされることを
そのまま受け入れるような単純な人たちじゃない
もっとも この遠隔作用に
待ったをかける意見が出て来たのは
クーロンさんの発表から
またまた100年ほど経っちゃうけど
前に書いたけど
ボルタ電池の開発から
電気についての研究が盛んになったんだ
電気の研究を深めていくと
どうしてもそこに付随して
磁気ってものの存在が出て来たんだね
この電気と磁気の相関関係 実験を繰り返すうちに
電気が伝わるのは離れている電荷と電荷が
直接力を伝え合っているっておかしいんじゃないか
って発表しちゃった人がいる
その人がファラデーさん
ファラデーさんの主張は
帯電体(電荷を持っているモノ)は
周りの空間を歪ませるんじゃないかというもの
その歪みが電荷と電荷の間に力を伝え合うという
直接接触じゃないけど
空間という媒介を通じて力を伝えるという
新しい近接作用の概念の仮説ってことだね
この空間の歪みという考え方は
一般相対性理論の引力の考えかたにも
通じているのかもしれない
この遠隔作用と近接作用
いよいよ議論が白熱しちゃた
場
帯電体の周りの空間が歪むって
どんなイメージなんだろう
単純に考えると
ぼくたちの周りの電気のあるところ
すべての空間が歪みまくっているってことになる
世の中がグニャグニャになっているところって
考えたくないよね
これはぼくの勝手な判断だけど
どうもこの空間っていう言葉は
ぼくたちの考える空間(世の中)
とは別口じゃないかな
電荷(電気を帯びたもの)ってものだけに
反応する媒体みたいな
考えかたじゃないのかって思えるんだ
(詳しい人から突っ込まれそうだけど)
この特殊な空間を
『電場』って呼んでるような気がするな
ファラデーさんの研究は
電気に特化していたわけじゃないみたい
というか 電気の研究は必然的に
磁気の研究にも繋がっちゃうんだね
もともと 電気の作用ってものは
磁力の別形態じゃないかって言うのが
クーロンさんの時代頃までは主流だったんだ
電気と磁気
この二つの相関関係が明らかになってきたのは
やはりボルタ電池の発明あたりからじゃないかな
ファラデーさんが
クーロン力の遠隔作用に待ったをかけたのは
電気と磁気の間の関係性が
遠隔作用だと説明しにくかったからかもしれない
ファラデーさんが実験から導き出した近接力の考え方
その時代での圧倒的な支持を得ていた遠隔作用
ここでもまた学会は
揺れたのかもしれないね
この議論に決着がつくのは
これまた50年ほどの時間が必要だったみたい
ファラデーさんの近接作用の理論(電磁場理論)を
方程式として確立したのがマクスウェルさん
古典電磁気学の
基礎を気付いた人って言われている
そのマクスウェルさん
理論として電磁波というものを予想したんだ
電磁波ってすごく大雑把に言うと
電荷の周りには磁気が発生して
磁気の周りには電荷が発生
それが波として進んでいくという性質のこと
磁石をぶん回すと電気が発生するってことと
原理的には同じなんだろうと思うよ
もし この電磁波ってものが
本当にあるとすれば
理論的には何も無いとされている空間に
電気を伝えるなにか(電場)が
あるはずだってことになっちゃった
そして1888年
ヘルツさんが電磁波ってものの存在を
実験的に確認しちゃったんだ
電磁波(電波でもいいよ)ってものが
本当に存在して
その性質は光と同じように
反射とか屈折する性質があるってことを
この時点から現代では
近接作用仮説の方に
軍配が上がっているんだね