まとめてみようか
相対速度が0
言い換えれば自分と同じ系にいるもの
(もう一つ言い換えればじっと動かないものってことかな)
の運動エネルギーってものを考えてみようよ。
常識(ぼくらもしくはぼくのだけどね)で考えれば
動いていないものって運動エネルギーが
無いように思わないかな。
運動エネルギーっていうのは
物体の運動に伴うエネルギーってことになっている。
単純に言えば物の速度と
重さが動くのに必要な仕事量のことだね。
ニュートン力学だと
運動エネルギー(Kって表記されるけど)は
物の質量と速さの二乗に比例するっていうことになっている。
式で書けば K=1/2mv2 ってことなんだ。
簡単に言えば自分に対して
相対速度0の物体っていうのは
運動エネルギーを持っていないってことになるんだよ。
だからぼくら(ぼくの?)の常識ってものが
間違っているわけじゃない。
それなのに四元物理量の運動量で考えるのならば
エネルギーは0じゃないってことになる。
0じゃないどころか
質量に光速の二乗を掛けた
膨大なエネルギーがあるってことになるんだよね。
特殊相対性理論は単純に
光速はどの系から観測しても一定である
どのような系でも物理法則は同じである
っていうシンプルな仮定が出発点。
だから必ずしもE=mc2ってことを
導き出すために考えられたものじゃないとは思うんだ。
でもその仮定から出発してとんでもないものが
出てきちゃったってことじゃないかな。
物質には時間方向のエネルギーが
内包されている。
これってある意味すごい可能性のある
理論なんだよ。
人間ってやつは
理論をすぐに実用に使いたくなっちゃうもんね。
単純に計算してみよう
質量はエネルギーである。
しかも質量×光速2の
膨大なエネルギー。
そういわれても実感はわかないよね。
だから単純な計算をしてみよう。
正確に算出するには不確定要素が
多すぎるから本当に単純にだけどさ。
光速(c)っていうのは
30万km/秒というすごい速さなんだってことは
今更言うまでもないよね。
たとえば質量が1gくらいの物体
(一円玉くらいの質量なんだ)
のエネルギーってどれほどなんだろうか?
1g(1円玉一個にしてみようか)を
全部エネルギーに変えたらどうなるかを
計算してみよう。
単純にE=mc2に当てはめるだけのことだけどね。
計算の距離の単位はメートル(m)質量はキログラム(㎏)、光速cは30万km/秒だから
E=1/1000kg×3000000002m(1g×3億m/秒の二乗)
ってことになる。
これをエネルギー単位の(J)で表すと
E=1/1000kg×3000000002=9×1013(J)
ってことになるんだ。
(J)っていうのはジュールっていう
エネルギー単位なんだけど
あまりなじみは無いかもしれない。
だからこれをカロリー(cal)で書いたほうが
わかりやすいよね。
1calっていうのは
1g(1㎖)の水を
1℃温度を上げるエネルギーってことに定義されているよ。
ジュール(J)とカロリー(cal)の変換は
1(J)=1/4.18605(cal) ってことだから
一円玉一個を完全にエネルギーに変えたときの
エネルギー量は
9×1013(J)≈2.15×1013(cal)
2.15の10の13乗ってことになるんだけど
これでもまだ実感はわかないよね。
だからもう少し具体的にしてみよう。
2.15×1013(cal)を100×215×106×103(cal)
と書き換えてみよう。
1トンの水は106gだから
109gの水ってことは1000トンの水ってこと。
1000トンの水っていうのはイメージでいえば
一辺10mの水の立方体を考えたらいいね。
だから100×215×109(cal)ってことは
凍る直前0℃の1000トンの水(一辺10mの水の立方体)を
215個分沸騰直前100℃まで上昇させる
エネルギーだってことなんだ。
これでもわかりにくいかもしれないね。
エネルギーだけで考えるのならば
石油だったら10万トンを燃やしたのと
同じぐらいだって思っていればいいんじゃないかな。
質量はエネルギー
光速度不変の原理
特殊相対性原理
というたった二つの仮定から
とんでもないものが出てきちゃったってことだね。
今書いたところは
同じ系(相対速度が無い系)でのはなしだけど
これが相対速度を持った系との間なら
どうなるのかを
簡単に書いておこう。
相対速度が光速に近づけば
そうとう影響は出てくるけど
ぼくたちが身近に感じる速度って
光速に対しては微々たるもの。
だからγ(ローレンツ因子)は
ほとんど1に近いから
あまり変わりは無いってことになっちゃうんだ。
ぼくたちの世界の乗り物では
ニュートン物理学に
疑問を抱かせるほどの
影響は無いってことだね。
たとえば音速にしたって
たかだか340m/秒
時速にしたら1224㎞/時なんだよ。
光速は3億m/秒
時速にしたら10億8000万㎞/時。
たとえマッハ(音速の表示だね)3や4なんて
騒いだところで
光速の30万分の1なんだから。
だから計算式は省いて書くと
空間成分の運動量は
ニュートン力学の運動量とほとんど変わらない。
ただ時間成分の運動量は
ほぼ1に近いローレンツ因子といえども
光速をかけることになるんだから
すこし注意が必要になるんだ。
この計算式(というよりマクローリン展開を使うらしいんだけど)は
ぼくの手に負えないから結論だけ書いておくと
γmc2≈mc2+1/2mv2 ってなるらしい。
この1/2mv2という式
多分気が付いた人も多いと思うけど
ニュートン力学の運動エネルギーを表す式ってことだね。
だから相対速度が光速に比べて
思い切り小さし場合の物質のエネルギーってものは
質量の持つmc2と
運動エネルギーの1/2mv2を
足したものになるってことなんだ。
実験結果
すこしだけ補足をしておこうと思う。
この質量はエネルギーだというE=mc2 は
ぼくなんかの常識では
まるで実感がわかない話なんだけど
じつはちゃんとした実験がおこなわれているんだよ。
単純に計算をしてみようって
書いていた時に
1g(1円玉一個)の物体が完全にエネルギーに
変わった時の計算を出したよね。
――凍る直前0℃の一辺10mの水の立方体を215個を
沸騰直前100℃まで上昇させるエネルギー。
もしくは10万トンの石油を燃やしたエネルギー ――
だって。
人間ってものは
理論を実用に使いたくなるって書いたけど
物質には時間方向のエネルギーが
内包されているってことなら
なんとかしてそのエネルギーを
利用したいっていうのが人情。
何度か実験はされたみたいだけど
じっさいに実用に供されて
結果が出たのは
今のところ2回だけかな。
(もっともこれも半分実験だったみたいだけど)
1945年8月6日に
日本の広島に落とされた「リトルボーイ」
1945年8月9日に
日本の長崎に落とされた「ファットマン」
この原子爆弾の質量欠損(質量がエネルギーに変わった分量)は
それぞれ約1gって言われている。
一円玉二個で第二次世界大戦の
趨勢が決まったってことに
なるのかもしれないんだよ。